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2010-06-27

「コスモス文学」№371 掌編部門書評

「コスモス文学」5月号が届いたのは2ヶ月も前の話なのだが、体調を崩していたのと忙しかったのとで、本日まで殆ど眼が通せずじまいだった。このブログも、ずいぶんと放り出してしまっていた。
ようやく、まずは掌編部門を読むことができた。今回のコスモスは、年間賞である第29回の「コスモス文学賞」も掲載されている。

勉強のために、書評を書くことにした。webにこういった読書感想文をあげるのはかなり勇気がいる(ひょっとしたら検索してここを作者氏ご本人がお読みになられているかも知れない)。なにぶん若輩者であまりものを知らぬ身ゆえ的の外れた発言を多々行うこともあろうと思うが、もしいらっしゃったのであればご笑覧頂ければ幸いである。また、ご意見なども承っているので、軽い気持ちでコメントを頂ければ望外の幸せである。

「化けるかもしらじ」:荒海新太郎 氏
■今回の掌編は、作者氏の描く蕪村像がより際立った一作だと思った。
欲張らず、テーマをひとつに絞った緻密な調査の労が、見て取れるようである。
中盤、文にわずかな乱れを感じたが、全体の完成度からすれば些細なものであると思う。
容姿など人物に余計な情報を付加しない書き方は賛否あるだろうが、落ち着いた渋い色合いを好む読者には、ほっとする文になるのではないだろうか。
ラストのまとめ方、流石にお見事である。柿屋伝兵衛は狐か狸か狢に似た姿だったのだろうかと、にんまりせずにはいられない。

「おじいちゃんのお面」:海辺野 夏雲 氏
■非常に丁寧な描写の物語で、正統派の児童文学を読んでいる気になった。ただ、児童文学にするには会話文が少なすぎ、またいささか語りが饒舌に過ぎるように思える。やはり、大人の読む子供が主人公の物語なのだろう。刻々と姿を変える海の描写は素晴らしく、見習うべきところがあると思った。
また、お面の描き方も過不足なく、好感が持てた。最後に突然お面が割れてしまったのはやはり無理に戸をこじ開けようとしたショックでだろうか。ここの部分を一言付け加えると納得がいったと思う。最後の鯛釣り名人の連は、私なら書かない。お面の話は既に完結してしまっている。

「玉座」:浜 由子 氏 
■五枚という短さにも拘わらず過不足なく纏めてあり、とても楽しく読めた。残酷な物語だったが、読後感は悪くない。素晴らしい作品だと思った。
ところで王たるアイはその妻ないし夫(性別が明確に描かれているわけではないのでどちらでもありえると思う、私はアイを女王として読んだ)と夜の営みをするときに、やはり二人分の重みにも耐えたのだろうか。素朴な疑問である。

「南十字星」:佐藤紫寿 氏
■優等生的な文章であり、隙がない。計算ずくで書くタイプの方と思われる。ただやや、物語の組み立て方が甘い印象を受ける。堅牢で隙がない文章は強みではあるが同時に柔軟さや伸びやかさにも欠け、しかしゲームのキャラクター名を露骨に出してくるなどの部分に、読者へのデリカシーのなさを感じてしまう。文体は純文学系ではあるが、描いているものの傾向はあまり本を読まない人々向けであり、純朴さが弱く、読者の心を掴みきれていないように思える。

「悲しい眼をした人よ」:佐藤邦夫 氏
■ウイスキーは旧仮名ではウヰスキーではないか。全作通しで旧仮名で書かれた作品ではあるが、作者氏はひょっとしたらお若い方なのか、旧仮名が馴染んでいないような印象を受けた。
これは好みになってしまうが、昔、私は仕事で精神薄弱児の父親の詩集の発行に携わったことがある。
そのときの父親の何ともいえない感情が、この作品には残念ながらあまり感じられなかった。文学作品を読み通して描いたか取材して描いた作品のような気がするが、これは作者氏の思いによるものではないかとも思われるので、なんとも言えない。
しかし、たとえ演出であったとしても、旧仮名は必要がなかったのではないだろうか。「コスモス文学」では年配の同人のために、かなり厳しくまた丁寧に仮名遣い表記を指導している。
私の好みになってしまって恐縮だが、なんとなくこの作者氏の本来の作品傾向でないように思えてしまったぶんだけ、題材の割には少々印象の弱い作品に感じてしまった。
なお、本作は第29回コスモス文学賞掌編部門の奨励賞作である。
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Chiduru.Y.

Author:Chiduru.Y.
小説を書いています。
しばらく更新が途絶えていましたが、また肩の力を抜きつつぼちぼち書いていこうと思います。

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